前回の続きです。
友人家族とゆっくりとした時間を過ごした後は、ウィーンへの小旅行に出かけました。
パルドゥビチェ→ウィーンは高速鉄道 RegioJet で3時間ほど。朝食持参で乗り込みます。

日本では珍しいアロエのジュースにヨーグルト、みかん。


みかんがいたって普通のみかんであることに感動しました。調べてみると、東アジア原産ながら、現在では世界中で食べられているそうです。
おばあさま手作りのアップルパイ(シュトゥルーデルstrudel)もいただきました。

シナモンとバターの香る優しいお味で、端っこの分厚いところがザクザクなのが美味しかったです。
念願の『カフェ・ザッハー』
私には、ウィーンで絶対に行きたいところがございました。
それは『カフェ・ザッハー』。元祖ザッハトルテで知られる老舗です。

常に大行列の人気店ですから、幼い坊やと同行するわけにはいかず、一人で伺いました。

待つこと数十分。まるで「美女と野獣」のお城のように豪華な店内にご案内いただきました。


これだけで来た甲斐があったと思わせてくれる、素敵な内装です。
迷うことなくオリジナル・ザッハートルテ(original sacher-torte)を注文しました。

一口いただいて、ホットチョコレートを想起するほど優しくて濃いカカオの風味に、うっとりいたしました。甘めのチョコレートクリームのしゃりしゃりとした食感と、スパイシーなスポンジのしっとり感のコントラストも素晴らしい。
添えられた生クリームはミルク感が強く柔らかで、ホイップクリーム好きな方でも大満足のボリュームです。

こちらのケーキは、間違いなく、人生でトップクラスの美味しさでした。ただ、「人生で一番か?」と問われると、「そこまででは無いかも...」という気持ちになります。お金さえ出せば、京都でだって”同レベルの品”はいただけます。
ケーキをいただきながら私は、150年の歴史を持つこのホテルのカフェで、創業当初から変わらないオリジナルを味わうことの意味、ひいては「旅をする」ということの意味について、考えていました。
そんな暇があったのも、私が一人ぼっちだったからです。カップルやご友人同士と思しきグループで朗らかにザッハトルテを召し上がっている周りの方々を見ながら、ここに誰か大切な人がいてくれればなぁと、一抹の寂しさを感じたのでした。
シェーンブルン宮殿見学とランチ
翌日。「あのザッハトルテを食べられただけで大満足、もうずっと坊やと公園で遊んでいたいわ」と申したところ、「シェーンブルンだけは行くべきだよ!」と友人に嗜められました。

そう言うなら、と訪れた宮殿は好みドンピシャ。世界で最も「行ってよかった」場所のひとつになりました。


流石はハプスブルク家、調度品も壁紙もとにかく「センスがよい!」のひとことで、居心地のよい、落ち着いた美しさに満ちていました。
公式サイトから日本語の音声ガイドを利用できるため、一人でも寂しくなかったのがありがたかったです。
宮殿に面する丘には『グロリエッテ』という別邸があります。


友人家族と合流し、『グロリエッテ』内のカフェでランチをいただくことになりました。

開放的で美しいこの空間でいただいたのは、パンとソーセージ、マスタードと西洋ワサビ添え(Sacherwürstel mit Senf/Kren u. Gebäck)。

うん。なんと申しますか、見た目通りのお味です。正直、チェコで毎日美味しいものをいただいていた身には、かなり味気なく感じられます。

「皇帝もこれを召し上がっていたのかしら...」と、音声ガイドのご説明を思い返しました。
皇帝フランツ・ヨーゼフはフランス料理よりも、ソーセージやシチューのような伝統的なお料理を好む、質実剛健な方だったとか。
とても真面目で、毎朝五時には執務を開始。週二回の謁見の時を除いては、一日中机に向かっておられたそうです。そのハードワーカーぶりに婚約者が脳裏に浮かびました。そして、彼をひとり置いてこんなところまで来てしまった自分と、奔放だった皇妃のシシィが(不敬ながら)重なり、なんともいえない気持ちになりました。
現地スーパーで気に入ったミルクライス
ウィーンでは友人家族と一緒に短期滞在用のアパートメントを借り、朝夕はこちらで食事をしていました。

現地ならではのものを様々お試しする中で、特に気に入ったのがミルクライス(milchreis)。

ぷるんぷるんで優しい甘さの、ライスプティングのような商品です。スーパーでは乳製品の扱いですが、牛乳の風味はそれほどありません。代わりにどこか和菓子を思い出させるような、自然なお米の香りと甘みがあります。
毎朝の朝食として友人家族と食べるだけでは飽き足らず、おやつや夕食後のデザートとしてもいただいておりました。欧州6日目にしてお米が恋しくて仕方のなかった私にとって、こちらが貴重なお米源となっていたのです。
カフェ・モーツァルトで朝ごはん
最終日の朝には、(懲りずに)一人で『カフェ・モーツァルト』に向かいました。

ウィーン出身の作曲家、モーツァルトの名を冠するこのカフェは、やはり150年近い歴史があるのだそう。

こちらでいただいたのは、オーストリア・ドイツで人気の甘味 カイザーシュマーレン(Kaiserschmarren)です。

パンケーキをずたずたに引き裂くという、ちょっと正気を疑ってしまうような一品なのですが、これが大変に美味でした。
香ばしいよく焼きの部分とふわんふわんで口溶けのよい部分、部分的に染み込んだシロップがじゅわりと染み出す幸福感、巨大なレーズンのアクセント、一口ごとにくるくると変わる味わいと食感がなんとも楽しい。フレンチトーストを思い出すような卵の優しい風味に、ほのかなレモンの爽やかさも感じます。甘さは朝食っぽさを残しつつも、デザートとして十分なくらい。

そこに添えられた林檎のコンフィチュールの美味しいこと!単なるすりおろし林檎ではないかと疑ってしまうほどの自然な甘さと、舌触りの滑らさがとっても心地よいのです。これだけでぱくぱくといただき、気がついたら無くなってしまいそうなくらいでした。言わずもがな、パンケーキとの相性は最高です!
もう一方のコンフィチュールはダークチェリー。その濃厚さに初めはびっくりしたものの、一度味わうともう林檎には戻れなくなるような中毒性がありました。
相当な量があったのですが、ケーキのしっとり感とコンフィチュールの瑞々しさのおかげか、一口も水分をとることなく、一心不乱にいただいてしまいました。
食べ終わる頃にはお腹はぱんぱん。二人前だったわねと苦笑しながらも、旅先ならではの新しい美味しさに出会えた喜びに満ち溢れつつ、ウィーンを後にしました。