ルコの甘味日記

甘いものを食べたり作ったり

SUBSサンドイッチストアのエルヴィスサンド

いつかのグレーテルのかまどに、エルヴィス・プレスリーが愛したサンドイッチという回がありました。映されるアメリカンなダイナーをきらきらと見ていると、バナナにジャム、ベーコン、そしてピーナッツバターの組み合わせが登場して衝撃を受けました。これが?エルヴィスに愛され?現在でもアメリカで定番のサンドイッチの一つとして知られると?本当に!

www.nhk.or.jp

ジャムとベーコンはまだわかります。お肉にベリーやオレンジのソースを合わせるようなものでしょう。でもそこにピーナッツバター!どんなお味になるのか、どうにも想像ができません。番組を見終わると同時にグーグルに検索をかけたのを覚えております。

エルヴィスサンド: Elvis sandwich)はピーナッツバターバナナベーコンを具材とするホットサンドイッチエルヴィス・プレスリーの母親グラディスが作った料理で、名前の由来ともなっている。エルヴィスの好物として知られ、「おふくろの味」でもあった[1]

エルヴィスサンド - Wikipedia から引用)

それから数年。すっかりエルヴィスサンドのことなんて忘れて過ごしていたある日、グーグルマップで京都の街中をぐるぐると見ていたら、評価のとても高いサンドイッチ屋さんを見つけました。

その名もSUBS サンドイッチストア。何気なくメニューを開くと、そこにいたのです!エルヴィスサンドが!

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(画像:https://subs-kyoto.com/menu-メニュー/

これは是非とも行ってみなければなりません!お友達を誘って、突撃してまいりました。

SUBS サンドイッチストアのベリーエルヴィスSUB

SUBSサンドイッチストアは、京都の繁華街から歩いて15分ほどでしょうか、二条のリッツカールトンから少し上に入ったところにあります。

この辺りかしらと何度も地図を確かめながらゆくと、SUBSと書かれた看板を見つけました。

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ゲストハウスと見紛うような外観。暖簾をよく見るとテナントの案内になっていますね。奥がお目当てのサンドイッチ屋さん、右手にレンタル着物のお店と、帆布の工房兼ショップが入っておられます。とっても町屋風の建物、これは海外からのお客さんも喜ばれることでしょう。

サンドイッチ屋さんの中は、こぢんまりとしつつもおしゃれなオープンキッチンになっております。町屋アメリカンとは斬新ですね。

メニューには、アメリカンなものから京野菜を使ったヘルシーなものまで、美味しそうなサンドイッチがずらり。私は迷わずベリーエルヴィスSUBに。お友達はベーコンカマンベールSUBにされました。二人で頼んだものを半分ずつにして盛り合わせていただきました。

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キッチンの奥には鉄板があり、こちらでお若いお兄さんが手際よくお肉やお茄子といった食材を焼いていかれます。ベーコンが反らないよう重しを置いておられたのに、なるほどと感心しました。

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まずはエルヴィスSUBからいただきます。ベーコン、バナナ、ピーナッツバター、ベリーソース、トマト、レタスにローストピーナッツ。余りにも盛りだくさんなそのお味は。

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まずパンをかじる、香ばしいクラストとふわっとしたクラム、美味しい!そしてフィリングにかぶりつきます。うん。複雑です。バナナとベリーソースとベーコンが強く、それぞれ主張してきます。噛むほどに変化していくお味。次の一口はトマト多め、など食べる場所によって随分お味が異なります。ピーナッツバターももちろんいます!こちらはなるほど、ピーナッツバター自体に甘みはないので、ナッツソースといった風情。重しをのせられて焼かれたカリッカリのベーコンと、ローストピーナッツのコリコリとした食感がいい仕事をしているのですが、なにぶん余りにも情報量が多すぎて、脳が処理しきれていないように感じます。美味しい…?気がする…?ひとつひとつは美味しいけれどここまで合わさるとなんとも理解が追いつかない。これは私が古い人間だからでしょうか、それともお出汁で育った日本人だからでしょうか。脳内にはてなの浮かんだまま、半分に切られたSUBを食べ終えてしまいました。

箸休めにピクルスやかぼちゃサラダ、ポテトチップスをいただきます。かぼちゃサラダは、マスタードの効いたユニークな味付け。柔らかめに作られていて、私はポテトチップスにディップしていただくのが気に入りました。ポテトチップスは硬めでバリバリ、アメリカっぽさを感じます。

気を取り直して、ベーコンカマンベールSUBもいただいてみましょう。

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美味しい。全てが理解の範疇に収まり、ほっとしてしまいました。それなりに時間が経っているのに、カマンベールがとろとろに溶けていて、幸福感があります。自家製だというベーコンが味わい深く、きちんと美味しいサンドイッチを食べている気持ちです。

お会計のとき、私がエルヴィスサンドとプレスリーについて熱く語っていたからか、「お客様みたいに、こちらをお目当てに来られる方が結構おられるんですよ」とお声かけいただきました。バナナとベーコン、ピーナッツバターまではよくあるけれど、ベリーソースが入っているのはこちらのオリジナルとのこと。いちごにラズベリー、少しアメリカンチェリーも入っているという手作りのソースは、ベーコンによく合う、間違いなく美味しいものでした。

何度かいただいているうちに、慣れてきて理解が追いつき、大好きになれるものかもしれません。お店を出たお友達が開口一番、「サンドイッチとハンバーガーしか食べない生活をしていたら、三ヶ月に一回くらい食べたくなるかもしれない」と。以前アメリカを旅行したときは本当に三食連続ハンバーガーからのサンドイッチ、といった生活でしたから、お友達のこの言葉はエルヴィスサンドがなぜアメリカで愛され続けているのかの的確な説明になっているように思います。

 

私とエルヴィス・プレスリーの出会いは、幼少期に遡ります。私は幼い頃、二世帯で下に暮らしていた祖母のところによく遊びに行っておりました。そのキッチンには大きな黒いラジカセがあり、祖母がときどきプレスリーを流していたのです。プレスリーや美空ひばりのカセットテープをかけながら、祖母は唐揚げなんかを揚げていたように思います。祖母が亡くなって久しくなりますが、生姜の繊維にまとわりつかれたような、祖母の一口サイズの唐揚げの記憶は褪せることがなく、プレスリーに紐づいております。

今、Apple Musicでプレスリーを聞きながらこの記事を書いています。好きな曲をいつでも手軽に聞けるのはいい時代になったものだと思いますが、背伸びをしてラジカセを覗き込んだあの日々もまた、私の宝物です。そんな温かな思い出を呼び起こしてくれるのが、とても個性的で私には数十年早そうなサンドイッチであったというのが、なんとも面白く、これだから新規開拓はやめられない!という気持ちになったのでした。

 

subs-kyoto.com

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