今年も夏がやってまいりました。
東京は京都よりもずっとましとはいえ、こうも真夏日が続くとお外に出る気がなくなってしまいます。
そんな中、暑さがすっかり吹き飛んでしまうようなお蕎麦を先日いただきましたので、ご紹介させてください。
京都の蕎麦、東京の蕎麦
京都で学生時代を過ごした私にとって、お蕎麦屋さんというのは日常的に行く場所ではございませんでした。
以前から何度かご紹介しておりますとおり、京都のおうどん屋さんというのは日常の場所です。

それに対して、尾張屋さんや河道屋さんのようなお蕎麦屋さんというのはちょっと敷居が高い。

数百年の歴史が放つ圧倒的なオーラのせいでしょうか、なんだか普段着で入るには気の引けるところでございました。
家族でちょっとお洒落をしてお出かけした日の選択肢、それがお蕎麦だったのです。
それが昨年、東京に越してきて衝撃を受けました。
あまりにもお蕎麦屋さんが多いのです。
立ち食い蕎麦やほとんど居酒屋さんのようなお店から、見るからに高級そうな老舗まで、街を歩けば至るところにお蕎麦屋さんがある。
さらに、お安いチェーン店でも惚れ惚れするような手際のよさで、美味しいお蕎麦を出してくださるのです。
東京に暮らして一年、気づけばお蕎麦は日常の選択肢となっておりました。
冷やしたぬきとの出会い
中でもお気に入りが「冷やしたぬきそば」。

ことのきっかけはこちらの、稲田俊輔さんのエッセイでした。
昨年の夏、これを読んですぐに、居ても立っても居られずお蕎麦屋さんに駆け込んだ日を懐かしく思います。
まさにこのとおりの”一心不乱”をもたらしてくれるジャンキーな味わいに魅了され、「たぬきといえばきつねのあんかけ」という故郷の常識はどこへやら、夏の定番となりました。
夏全開のたぬきそば
さて、ここで冒頭のお蕎麦のお話に戻ります。
先日、近所の昔ながらのお蕎麦屋さんでランチをいただいたときのこと。
壁に貼られた「冷やしたぬきそば」の文字にワクワクと注文をして待っておりましたら、出てきたのがこちらでした。

えっ......冷麺...?(関西では冷やし中華をこう呼びます)
キンキンに冷えた器に盛られているのは紅生姜にキュウリ、カニカマ、錦糸卵にワカメ、そして溢れんばかりの天かす。
それはお蕎麦の概念を覆すほどのカラフルな一皿でした。
混ぜてよいのかどうかもわからず、恐る恐るお蕎麦を手繰り寄せて口に運びます。
小さな天かすが玉のれんのように纏わりついたお蕎麦をそのまま口に含むと、ザクリと音を立てて、クリスピーな風味が鼻を抜けていきます。油の甘みと出汁の風味が合わさった強烈な旨みに、噛み締めると広がるお蕎麦の風味、そして飲み込んだ麺の冷たいのどごし。
冷やしたぬきだ。美味しい。
トッピングも一緒にいただいてみると、なるほど未知の世界が広がっておりました。
そう、冷麺の味がするのです。でもお蕎麦の味もする。
添えられたわさびが、冷麺の具にはカラシ、という固定観念を軽々と覆してくれました。
このわさび、天かすの油っこさ、キュウリの青臭さ、カニカマの磯の香、そしてお蕎麦特有の風味の強さ、全てを適度に中和しまとめ上げる、とても重要な役割を果たしているように思います。
一方、紅生姜の酸味とのコラボは斬新すぎて、思わず笑みが漏れました。
ザクザクとした天かすにシャキシャキのキュウリ、柔らかな錦糸卵、そして多種多様な旨みに溢れた具材たちが、一口ごとにくるくると現れては消えてゆきます。
無心でいただいていたら、いつの間にかお皿は空になっておりました。
食後は、なんだか打ち上げ花火を見た後のような、晴れやかな気持ちになっているのを感じました。
夏のことは好きにはなれないけれど、この瞬間だけは「暑いのも悪くない」みたいに思えるのだから、不思議なものです。
今年の夏も、美味しいものの力を借りて、元気に乗り切りたいと思います。
















































