「京都旅行の締めくくりに京都駅でお夕飯を買うとしたら、どこの何がいいかしら」
このように尋ねられたとして、少し前の私ならどう答えたでしょうか。
『551蓬莱』の豚まん?
圧倒的な美味しさとコストパフォーマンスを誇る、関西人のソウルフード。
バスに乗った瞬間みんなが振り返るほどの「蓬莱の匂い」の強烈さに目を瞑れば、これ以上のものはないかもしれません。
『紫野和久傳』さんのお弁当?
四季折々のおかずやお寿司はどれも間違いない美味しさですし、「ローストビーフちらし寿し」は、付け合わせの奈良漬がオツで楽しい一折です。
同世代には少々勧めづらいお値段設定が玉に瑕でしょうか。
『三嶋亭』さんのすき焼弁当、『一の傳』さんの西京漬け(これはご帰宅後に焼かねばなりません)など、選択肢は数あれど。
『伊勢丹』さんに老舗寿司専門店『いづう』さんが入った今、私の答えは一つです。
「『いづう』さんでおいなりさんを買ってください!」
いづう 京いなり寿司
『いづう ジェイアール京都伊勢丹店』がオープンしたのは、今年の夏のこと。こちらでは、今まで『大丸』さんでしか買えなかった「京いなり寿司」が購入できるというではありませんか!
名品揃いの『いづう』さんのお品の中で、私が一番好きなのが、このおいなりさんなのです。
昨日、母が買ってきてくれました。
一人前は五つ入り。常温保存で、お日持ちは当日中です。
お箱を開けた瞬間、柚子の香りがふわっと広がります。
あら?『いづう』さんといえば、の三つ葉がありません!
(画像の出典:お召し上がり処 – 京都祇園新地 いづう)
このお写真のように、ひとつひとつに三つ葉が結ばれているものと思ってお箱を開けたので、びっくりしてしまいました。
調べてみたところ、「伊勢丹での販売には三つ葉がない」と書いておられる記事を見つけました。
このなんともいじらしい、慎ましやかな一細工が好きなので、ちょっと残念。
さて、一口いただけば、お揚げからじゅわりと滲み出す油とお出汁の旨みに、はらりとほどける独特の酢飯、そして柚子の爽やかな香り。
こちらの酢飯は、炊き込みご飯のように淡く色づいているのが特徴です。お米はハリがありつつ柔らか。「酸っぱい」感覚とは程遠い、どこまでもまろやかな「お酢」の旨みを感じます。
そこに混ぜ込まれているのは、白胡麻、椎茸、そしてきくらげ。この胡麻の風味の素晴らしいこと!ぷちんと弾ける歯応えを感じるや否や、鼻に抜けるような圧倒的な香ばしさを放ち、影の主役と言っても過言ではないほどの存在感があります。きくらげのコリコリとした食感も楽しい。
それを包むお揚げさんはうんと薄く、繊細なお作り。それでいて、これでもかとお出汁を吸わせておられるのでしょう、尋常ではない旨みがあります。甘すぎず甘くなさすぎず、辛くもなく薄味でもない、まさに絶妙な味加減。
さらに、上等なお寿司屋さんの例に漏れず、こちらのガリは本当に美味しいのです。
きゅっと甘酸っぱいのにまろやかで、油っぽくなったお口の中を優しくさっぱりとさせてくれます。おいなりさんと共に口に含んで、シャキシャキとした食感とじゅわじゅわのお揚げのハーモニーを味わうのも大好き。
甘いお出汁と油がくらくらするような幸福感をもたらしてくれる、『いづう』の「京いなり寿司」。これを心ゆくまで頬張れる喜びは、「これ以上の幸せはないわ!」と思ってしまうほどです。
京都にお越しの際には、ぜひ召し上がっていただきたいと思います。
また、『いづう』さんにお立ち寄りの際には、ぜひ「鯖姿寿司」もお試しください。
断面が「うさぎ」に見えるように仕立てられた、美しい鯖寿司。
見た目に違わぬ品のある味わいは、さすが名物と思わせられる逸品です。
こちらは翌日までお日持ちしますので、京都旅行を締めくくるのにぴったりのお土産になってくれることと存じます。