東京の湯島駅周辺には、下町らしい情緒のある和菓子屋さんが集まっておられます。「いつか湯島の名店巡りをしたい」という願いが、先日叶いました。
コースは『豆大福つる瀬』→『かりんとう ゆしま花月』→『甘味処 みつばち』。これらはいずれも、湯島駅から歩いてすぐの、大変に周りやすい立地にあります。
朝食はサラダだけにして準備万端。下町の甘味処巡りに出発です!
つる瀬 湯島本店
湯島駅の三番出口の階段を上がると見えてくるのが『つる瀬』さんです。
こんなに駅に近いとは知らず、心の準備のできていない状態で目に飛び込んできたので、一気にテンションが上がりすぎて心臓がどきどきしました。
逸る気持ちを抑えつつ信号を渡ります。
豆大福に加え、「むすび梅」というおこわやお赤飯もこちらの売り。
喫茶室に、開店と同時にご案内いただきました。
やはり一押しは「むすび梅」のよう。早速いただいてみましょう!
結び梅 おかず付き
「むすび梅」というのは、湯島天神さんの境内にあった梅の木のお名前なのだとか。この木を植樹したご夫婦が仲睦まじく長寿に恵まれたことから、縁起がよいとされているそうです。
こちらはおかずとお吸い物とのセット。
白いのは千枚漬けかと思いきや、蒲鉾でした。他にはだし巻き、うぐいす豆、どんこ、牛蒡と人参の焚き合わせ。どちらも甘く、お出汁が効いていて美味しかったです。
お吸い物は塩気がはっきりとしており、きりっとした印象。
それでは本命の「むすび梅」をいただきます。
一口いただいて、香りの良さにびっくり!それ自体に塩味のない、しっかりと梅の香るおこわのお上品さが秀逸です。
中には切昆布と大豆。これらと梅の組み合わせになんとも「粋」を感じました。
白干小梅も優しく品の良い甘酸っぱさ。おこわと相性ぴったりです。
おこわは朝から炊いておられるのでしょう、柔らかくてもちもち。
開店直後に伺うことのできた幸運を噛み締めながら、しみじみといただきました。
豆大福
時間差で出していただいたのは、人気No.1の豆大福。
断面がこちら。フォークで割ったところガタガタになってしまい、お大福に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
この皮の薄さが「如何にも東京のお菓子!」という感じがいたします。
一口いただいて、皮の旨みが爆発するような粒あんに驚かされました。問答無用で「小豆の皮、美味しい!!」と思わされるようなあんこです。
これに絶妙な塩気とお豆の食感が加わる、力強い味わいの豆大福。
お豆は小ぶりの赤エンドウ。『ふたば』さんのものと比較すると、お豆の存在感が薄いように思いました。単体でいただけばしっかり香りと味が感じられるので、あんこの主張が強すぎるがゆえに、脇役になってしまっているのでしょう。とはいえこりっとした食感がアクセントになっており、豆大福らしさは十分です。
以前の記事で書きましたように、『ふたば』さんのお豆があまり得意ではなかった私の好みからしますと、お豆の存在感はこれくらいがよいと感じました。『ふたば』さんはあんこがこし餡ですから、よりお豆の食感、小豆のお味とのコントラストが強く感じられるのだと思います。
店員さんが一人客の私を気にかけてくださり、少々お話をしてくださいました。
「京都から来た」「いつも出町ふたばの豆餅を食べている」旨をお伝えしますと、「デパートでいつも豆餅の抽選に応募するのだけれど、外れ続けているんです」とおっしゃいました。
京都なら新幹線改札内でだって買える豆餅が抽選式とは、びっくりです!
「東京はなんでもある」と常々感じておりましたが、あるといっても手軽に手に入るとは限らないのだと知ることができました。
とても気さくで素敵な店員さんのおかげで、一人でも寂しさを感じることなく、楽しい時間を過ごさせていただきました。これだけ旨みの強いあんこをお作りになるのですから、今の時期「小倉アイス」がさぞ美味しいことだろうと思います。また暑いうちに伺いたいものです。
東京湯島の甘味処巡り。次回に続きます。