いわずと知れた和菓子界の王者、『とらや』さん。
日本全国はおろかパリにまで店舗があり、季節限定に空港限定、赤坂店限定など、限定品の数は数知れず。
そんな『とらや』さんが、7月17日~19日の三日間「京都限定」で販売されたのが、「小倉餡の土用餅」でした。
そもそも「土用餅」とは、土用の入りに合わせていただくお餅のこと。
2024年の土用の入りは7月19日(金)。土用とは、暦の立春・立夏・立秋・立冬の前18日間を指しますが、現在は立秋の前の夏の土用がよく知られます。初日である土用の入りには、暑さ負けをしないように、土用餅を食べる習慣があります。餡に使う小豆には、厄除けの力があるとされています。
出典:株式会社 虎屋
ちょうど祇園祭の前祭を終えた京都の町は、連日逃げ出したくなるほどの暑さ。
お餅で暑気払いをしたいところだけれど、平日の三日間限定のお品。手に入れるのは難しいと諦めておりました。
そんな折、伯母から百貨店に行くけど食べたいものあるか、と尋ねられました。
「遠慮せず寿司、焼肉弁当、すき焼き弁当、なんでも言うてね〜」とのLINEに、私の答えはただ一つ。
「お弁当より私はこちらが嬉しいです」という無茶苦茶な返しに応えていただきました。
期待に胸を躍らせながら実家に帰ると、あの虎さんのロゴが待っていてくれました。
流石は『とらや』さん。立派なお箱です。
お願いした「小倉餡」だけでなく、定番の「黒糖餡」も!
お菓子の数だけ黒文字を入れてくださっていて、「六人で食べると思わはったのかしら」とちょっと恥ずかしくなりました。
これから三人でいただきます!
土用餅 黒糖餡
まずは東京・横浜・京都で販売されていた「黒糖餡」から。
「全国区」と書こうと思ったら全くそうではなくて驚きました。ほとんど東京と京都だけではありませんか...!
この完全な「丸」の美しさが、如何にも『とらや』さん。
なんといいますか、お菓子のお顔が整っているのです。妥協を許さない気高さを感じます。
底面にまであんこがしっかり。もちろん、中のお餅もまん丸です。
いただきますと、ぶわぁっと広がる黒糖の香り。
濃厚な小豆の風味をベースに、これでもかと黒糖の効いた濃いあんこ。ほんの小さな欠片でも「美味しい!」と思わせる、この力強さが『とらや』さんらしいです。ただ、夏のお菓子だからでしょう、重たくなりすぎないように調整されていると感じました。
黒糖とあんこのマリアージュには、馴染み深い羊羹「おもかげ」の面影があります。しかしながら、さらりと溶けていくこし餡の滑らかさは生菓子だからこそ。「やっぱり日持ちのするお菓子とは段違いの美味しさがあるわ」と幸せな気持ちになりました。
お餅は、炊いた餅米を搗いて作る、いわゆる「餅」をベースにしておられるようです。夜まで置いておいたせいで、少し固くなっていました。とはいえ、もっちり噛みごたえのある甘いお餅は、それはそれで美味しいものでした。
土用餅 小倉餡
続いて、京都限定の「小倉餡」。
見た目はテッカテカの粒あんのおはぎ。
この輝きとまん丸加減、やはり唯一無二の美しさです。
断面を拝見するに、「黒糖餡」よりあんこの割合は少なめ。より良いバランスになるようにしておられるのかしら。
一口いただいてみた感想は「おはぎだ!」。いわゆる和菓子屋さん系統の、ごはん主役のおはぎの味わいによく似ています。
おはぎでは「半殺し」にするところを「全殺し」にして(物騒ですね)、『とらや』さんらしい上質な粒あんで仕上げた感じ。
食べ比べた結果、個人的には「黒糖餡」に軍配が上がりました。
もちろん、「小倉餡」の粒あんの香り高さ、ねっちりとした濃厚さ、洗練された甘み、それはもう間違いなく美味しいです。
でも、「土用餅」としていただくなら、「黒糖餡」の強烈な香りと、すっきり消えていくこし餡の口溶けの方が、今の季節に相応しいように感じました。
ただ、これは完全に好みによります。繰り返しますが、どちらも本当に美味しいのです。
一緒にいただいた両親は「黒糖餡」派。伯父と伯母は「小倉餡」派。
伯父は無類のあんこ好きですから、きっとあんこを存分に楽しめる「小倉餡」の方が好みだったのでしょう。「もんのすごく美味しかった」と言っておりました。
さらに、お飲み物を何にするかにも左右されるように思います。
私の感覚では、「小倉餡」の方が重たく感じました。それゆえか、食べていると無性に「おうす」が欲しくなるのです。お煎茶では力不足が否めず、「お抹茶を、お抹茶をちょうだい...!」という気持ちで食べ終えました。
もはや上生菓子にも近い重厚さなわけですが、ふたつペロリといけてしまったところは、「まだこちらの方が軽いな」という印象です。『とらや』さんの練切をふたついっぺんに食べろと言われたら、しんどいですもの...!
「黒糖餡」が134キロカロリー、「小倉餡」が133キロカロリーと、エネルギー的にはほぼ互角です。お日持ちは当日中。
『大丸』さんでの購入でしたが、お作りは『京都一条店』でした。あそこから京都中に運んでおられるのですね。
三日間限定の「土用餅」。食べ比べることができて大満足の夜となりました。
残りの夏も、なんとかバテずに乗り切りたいと思います!