東京駅のグランスタは、流行りのものから伝統的なものまで、またリーズナブルなものからギフトに最適な高級品まで、ありとあらゆるお土産の揃ったスイーツの迷宮です。地下にも一階にもたくさんのお店が立ち並び、どこもかしこも人がいっぱいで、慣れていなかったころは永遠に目的のお店に辿り着けないように感じたものです。今なお迷ってしまうことはありますが...。
きんぴらごぼうのかりんとうで有名な錦豊琳さんは、JR・新幹線の地下改札内、銀の鈴エリアと呼ばれるところにあります。先日東京へ行ったときに、こちらのかりんとうを自分へのお土産として買ってまいりました。
日本橋錦豊琳のきんぴらごぼうかりんとう
お日持ちは二ヶ月と少し。常温保存可で長持ち、ありがたい限りです。
袋を開けた瞬間、ごぼうの香りがぶわっと漂います。お皿にあけてみました。
全く映えません。これも全て私の力不足です、ごめんなさい。写真ではなんだか蠢くワームのようですけれど、つやつや輝く美味しそうなかりんとうです。
一本いただいてみますと、まず舌にきんぴらの味を感じ、すぐにかりんとうの甘さとカリっとした食感がやってきます。後味は七味のぴりりとした辛さ。美味しい!もっと野菜スティックのような、おつまみに寄った味わいかと思いきや、これはきちんとお菓子のかりんとうです。オーソドックスなかりんとうの風味が、こんなにもきんぴらの味と香りに合うなんて思いもしませんでした。袋を開けたときに感じたごぼうの香りは食べているとそこまで強くなく、でもしっかりと「これはきんぴらごぼうです」と主張しています。
断面がグレーなのは、原材料にある炭末色素によるものでしょう。七味のぴりぴりとした刺激が心地よく、大人の上質なお菓子、という感じがいたします。新しさと伝統を両立した非常に楽しいお菓子です。この甘じょっぱさは年配の方にも馴染みやすく、気に入っていただけるのではないでしょうか。
かりんとうができるまで
お店案内にある「自然発酵」の字を見て、あれっと思いました。かりんとうって発酵生地だったの?
どうにも気になり、「かりんとう 作り方」で調べてみます。
Youtubeのこの動画、大変面白かったです。工場見学、なんて楽しいのでしょう。つい冷凍たこ焼きなど他の動画まで見てしまいました。
こちらのかりんとう工場では、強力粉をベースに蜂蜜がたっぷり入った生地を練り上げて発酵させ、小さな棒状にカットして、三度にも分けてカリカリになるまで揚げています。確かにかりんとう特有のカリっとした硬さは強力粉由来でしょうし、それを容易に噛み切れるくらいの強度にするにはイーストの作る気泡が不可欠です。考えてみたらわかりそうなものの、日本の古典的なお菓子で発酵生地を使うものがあるなんて思ってもみなかったので、しげしげとかりんとうを眺めてしまいました。
かりんとうは奈良時代日本にもたらされ、以来珍重されてきたとのこと。ということは、小麦粉を使った生地のイースト発酵技術が、奈良時代には日本にあったということでしょうか?
こうした発酵生地は古代エジプトで生まれ、ギリシャ・ローマと発展してきた歴史があります。西洋で発酵生地を「焼く」パンが栄えた一方、中国では「蒸す」万頭が好まれました。これらはいずれも紀元前に生まれたものの、日本に伝わったのは室町・安土桃山時代とされています。この辺りのお話はWikipediaに詳しいです。
ですから私は、日本人が小麦を練って発酵させるということを知ったのは室町時代以降のことだと思っていたのです。それがもしかすると、もっと前から行われていたかもしれない。もっとかりんとうのことが知りたい!と様々なサイトを見てみましたが、かりんとうの起源は諸説あるとされ、いつから発酵生地が使われていたかは明言されていませんでした。残念。
多くのサイトには江戸時代以降に現在のかりんとうの原型ができたとありますので、発酵生地を用いるようになったのもその頃ではないかと妄想いたします。それまではきっと、無発酵のもっと硬い生地を細くするか、薄くするかして揚げていたのではないかしら。
思いもよらず、かりんとうの作り方から中世の日本に思いを馳せることになりました。
錦豊琳さんのWebサイトを見ていますと、限定品含め、たくさんのかりんとうを取り扱っておられます。「江戸前納豆海苔巻き揚げ煎」も気になるところ。和菓子で納豆といえば普通は甘納豆ですけれど、これはきっとあのねばねばの納豆のことをさしているはず。ぜひ一度お試ししてみたいものです。
東京に行くときに抜群に寄りやすいアクセスの良さ、常温OK、軽くて壊れにくく、持ち運びしやすいことなど、買わない理由がない日本橋錦豊琳さんのかりんとう。次に東京に行くときにはどれをお持ち帰りしようか、今から楽しみです。